ステンレスフレットに交換のご依頼です。
すでにお客様がばらした状態での持ち込みでした。ご依頼はフレット交換、ブラスナット、ほかいろいろフル組み込み改造です。
話はそれますが、どこでも聞くリペアあるあるです。このギターを預かったときもまたスキャロップ!と思いました。そう、なぜかリペアの仕事をしていると、同じ修理が自然と集まります。
SNSのにアップしたりする以前に依頼が重なったり、続いたりします。もちろん、SNSの影響もあるかもしれません。でも確実になんだか不思議なことが起こります。ほんとに珍しい修理が立て続けに来たりとか。まあ、それはそれで作業性など、こちらとしてはいいことなのですが。なんの因果が働くのでしょうか。
戻りますが、こちらのスキャロップされたストラトのフレットを交換します。
Jesarというメーカーのステンレスフレットに交換。ジャンボサイズ。
ステンレスフレットについてはいろいろ他で解説もあると思うので割愛しますが、錆びない、硬い、減らない、弦の滑りがよくスムーズなどです。
工賃として硬いので少し作業性が悪いので、ちょっとだけ工賃を上乗せしています。
体感でステンレスとニッケルシルバーを比べると、ニッケルシルバーがほんとに柔らかく感じます。ステンレスは切るだけで一苦労といった感じです。
喰い切りの鋭くしたもので、抜くのではなく持ち上げてとります。ローズやメイプルなら接着されていなければ、ほとんどチップせずに抜けます。
どうでも良いですが、このフレット抜きニッパーは高校生のときに買いました。自分のギターをフレット交換したんですよ。
湿らしたウエスにコテを当ててフレットで潰れた溝も少しでも膨らまします。まあ、気休め程度ですが。
ガラス板でしっかりならして、溝周りに接着剤を流します。そのままにしておくと、指板調整しているときに、何箇所か気が付かないうちにチップしてどっか行く。
指板調整。フレット交換するようなタイミングですと、新品の状態からネックの状態も変化していますので、指板上でまっすぐになるように修正していきます。ジョイント部分が起きていたり、僅かなねじれなど、この状態で修正できればもう安定しているでしょうから、長く良い状態で使えます。
指板調整もしながら、スキャロップも確認。ポジションごとにアールが崩れています。ポジションマーク付近だけ山形に残っていたり、逆に指板アールが緩かったりガタガタでした。
お客様からも依頼頂き、後ほどスキャロップもしっかり修正をします。
指板調整が終わったら、溝の調整をします。ここがフレット交換で一番大事だと思います。しっかりやっておかないと、フレットがちゃんと入りません。
溝の深さ、幅を全フレットしっかり確認。
フレットごとに、タングの長さが違うので毎回余ったフレットのタングを削って溝の確認に使っています。
フレットのタングの端はそのまま打つ場合と、端を予めカットする場合とありますが、今回はカット。
ここでもステンレスの硬さが効きます。指がしびれます。
プレスで打ち込み。一本一本確実に。
鉄ヤスリで削ります。ここまでくれば、ステンレスの苦労は一段落と思います。
スキャロップの再整形終わり。見た目もスッキリ洗練されました。
フレットサイドをあらかた削ったら、サイドを仕上げていきます。
ストラトキャスターはブリッジの弦間ピッチが広く、1,6弦がネックのかなり端を通ってます。なので、フレットサイドが寝ていると弦落ちしやすくなります。
今回ジャンボフレットに交換するので、ここは結構注意です。フレットの高さがある分、低いものと同じ角度でフレットサイドを削るとフレットの頂点の幅が低いものよりさらに狭くなります。するとより弦落ちのリスクが高まります。
なので、できるだけフレットサイドは立てて仕上げます。ですが、立てるとやはり引っかかる感じがあり痛いのです。なのでフレットの角を落として痛くないよう丁寧に仕上げていくのです。
フレットサイドを磨き仕上げ終わったら、最後すり合わせをして行きます。
指板調整もしてあるので、ほとんどすり合わせも必要なないくらいにはなっていますが、人間が打つので多少誤差が出ますし、より精度を高めるために必要な工程です。弦高をより下げるためには、フレット上で円錐にする必要もあります。
フレットの傷を取り、バフを掛けて磨かれたフレット。
これにてフレット交換は完了です。
エレキギターの修理やカスタマイズの中でも高額な部類のこの修理。きちんとしたところに依頼をされることをおすすめします。
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